むかしむかし、 ティアナワンガというジャングルに、 ※SANTIE(サンティエ)という一頭の象が住んでいました。 神々は大地と共に歩み、 生きとし生けるものもの全てが 同じ言葉を話し、同じ笑い方をした頃のお話。
《虫食い穴》の中はとても冷え冷えとしていました。 また外界の光という光は翼を失い 音という音はその姿を隠し、 このティアナワンガの森に これほどまでに静かな場所があるということを、 おそらくSANTIE(サンティエ)は初めて知ったことでしょう。
夜はまるで湖の底。 湿気を含んだ風の波打ち際に、 SANTIE(サンティエ)は夢のこちら側とあちら側を 行ったり来たりしていました。 もうすぐ《スコール》 がやってくる。 はちきれそうなばかりにつやつやとした木々の葉に おそらくそんな事を感じていたのでしょう。
Birdがいざなったのは ティアナワンガの西南端、トトスコスの岬。 若きジャングルの散策者は、 海の彼方に沈む太陽を初めて見ました。 あの大きな目玉に何て名前をつけようか? そんな事を考えていたのかもしれません。
翼を持たないSANTIE(サンティエ)は知っていました。 自分には知りようもない世界があることを。 しかしSANTIEは知っていました。 流れゆく雲が美しく形を変える事を。 再び訪れる明日に、またたく星が勇気を与える事も。 そして夜から生まれる朝が、昨日と同じでない事を。
どのくらい眠っていたのでしょうか? 目覚めるとBirdの姿はありませんでした。 陽は沈み代わりに月が昇り、そしてまた月が沈もうとする時間。 SANTIE(サンティエ)は太陽と月が交代した事に気づいていませんでした。 あの太陽は眠っているな。 きっとそんな事を思ったのでしょう。 足音を立てないようにゆっくりと森へ帰ってゆきました。
雨上がりにビコーはねぐらの外へ出てきました。 木々の葉からまだ雨の余韻がこぼれ落ちています。 風は一足遅れで雨を追いかけていくように森を駆け抜け、 光がやっとの思いで地面に辿り着いた頃、 再び生命がゆったりとした時を刻み始めます。 やがて森は、思い出したかのように歌いはじめるのです。 それはまるで新たな一日が始まったかのよう。
その大樹にぽっかりと空いた祠は まるでこちらを見据えているかのよう 大樹にはサンティエの瞳の奥の こころのかたちまで見えているのでしょうか 今はお互いに何も語らぬ彼らを 夜が静かに見守っています サンティエは祠の奥の見えない闇に 森の精霊たちを見ていたのかもしれません
時間は涙の雫 滴り落ちる星々の想いを 大地が受け止めていました あの月の弓は何を射ようとしているのか 放たれた流星の矢は 見事なまでの直線で彼方へ消えてゆきました 一息つくとSANTIE(サンティエ)はまた歩き始めました あてがあるわけでもないけど、止まっている理由もない 遥か遠くで雷鳴が聞こえたような気がしました
Birdは腹をすかしていました その日、一日中飛び回っていたというのに まだ何も口にしていません あの無限に広がる星々を食べることが出来たなら 毎日食べても、けっして無くなることはあるまいよ そんなことを思っていたのでしょうか
ここで食事をしようと思っていたのに 木の枝のハンモックに揺られて 眠くなってしまいました SANTIEは心配そうに顔を出したビコーに気がついたのでしょうか? もうがまんできない! 重いまぶたが閉じると、眠りにおちてゆきました 風はとても気持よく通り過ぎ すれ違いざまに残した木々の葉の合唱が さわさわと肌を撫でるのを感じていました